TOP > 人生100年時代の副業 > 【元県庁職員が解説】公務員はユーチューバーになれないのか?時代遅れの副業禁止や収益の謎に迫る
公務員が副業でユーチューバーをやるのは問題ないですか?
公務員って副業でお金を稼いではいけないんですよね?
公務員が副業ユーチューバーで活動する上での注意点や懲戒処分を受けた実例などがあれば知りたいです!
わたじろー
こんな悩みを解決できる記事を書きました。
県庁職員として約10年勤務した私が解説します。
最近、公務員であることを自称してYouTube活動をしている人が増えてきているので、法律的に大丈夫なのか気になっている人も多いと思います。
また、現役公務員の方の中には、仕事を続けながらユーチューバーとして稼いでいきたいと考えている人もいるのではないでしょうか。
この記事では、法令の根拠などを示しながら、公務員の副業の可否やユーチューバーとして収入を得るための方法などを解説していきます。
このページの目次
公務員でもユーチューバーになれます。
条例や内部規則で禁止している可能性はありますが、公務員といえどもYouTubeなどのすべてのSNSを禁止にはできません。
表現の自由や通信の秘密が、憲法21条で定められているからです。
YouTubeをやること自体は禁止されていないので、公務員が発信していても直ちに違法とはなりません。
憲法第21条
1、集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2、検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
公務員はまったく収益を得てはいけないわけではないですが、YouTubeの場合は控えておいた方が無難です。
所定の手続きを行わずに収入を得ると、懲戒処分の対象になる可能性があります。
法令の規定が追いついていないため一部グレーゾーンではあるのですが、実際に懲戒処分が行われた事例も出てきています。
詳細については後述しますが、たとえばYouTubeでゲーム実況チャンネルを開設し、約115万の広告収入を得ていたとして、1カ月間の減給(10分の1)を受けた人も出てきているのです。
公務員が副業ユーチューバーで活動する際に注意すべきことを、以下のとおりまとめました。
一つずつ詳しくみていきましょう。
公務員がYouTubeで配信する際には、顔や実名は出さないで行うのが基本です。
公務員であるというだけで、炎上の危険や匿名の通報により問題になるケースがあるからです。
匿名での発信や組織に所属を明らかにしていない場合でも、特定がされた場合には組織を代表した発言であると捉えられる場合があるので注意しましょう。
実際、総務省が発表した内容にも、YouTubeなどのSNSに対して、以下のような注意喚起がされています。
・発言の一部分が切り取られる等により、本人の意図しない形で伝播するおそれがあること。
・匿名での発信や氏名又は所属する組織の一部を明らかにせずに行う発信であっても、過去の発信等から発信者又はその所属する組織の特定がなされるおそれがあることや、国家公務員としての発信とみられる場合には、組織や職員の評判に関わるおそれがあること。
平成25年6月28日総務省発表「国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点」
信用失墜行為をしないようにしましょう。
信用失墜行為とは、犯罪などの公務員に対する信用を傷つける行為です。
YouTubeでゴミ捨て場から冷蔵庫を拾ってきた(窃盗や遺失物横領罪)などを発信すると、すぐに炎上するでしょう。
公務員の不祥事は、一般人に比べて問題になりやすいので注意しましょう。
【国家公務員の信用失墜行為違反の根拠】
国家公務員法(信用失墜行為の禁止)
第99条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
【地方公務員の信用失墜行為違反の根拠】
地方公務員法(信用失墜行為の禁止)
第33条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような
行為をしてはならない。
公務員には守秘義務がありますので、公務で知り得た事実を発信しないようにしてください。
仕事で知った国民の情報をYouTubeで発信すれば、守秘義務違反で懲戒処分になります。
社会的や漏洩された個人への影響が大きくや公務員への信頼を損なうものなので、免職につながることもあり得るでしょう。
【国家公務員の守秘義務違反の根拠】
国家公務員法(秘密を守る義務)
第100条1項 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
【地方公務員の守秘義務違反の根拠】
地方公務員法(秘密を守る義務)
第34条1項 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も
また、同様とする。
公務員には勤務時間内は職務に専念する義務があるので、仕事中に発信するのは絶対にやめましょう。
出張の移動時間や残業中にも注意が必要です。
たとえば、昨晩撮ったYouTubeのための動画を、残業中に投稿してしまうと職務専念義務に反すると判断される可能性があります。
YouTubeの動画を勤務中に撮る人はいないと思いますが、動画の投稿はうっかりやってしまいがちですので気をつけましょう。
【国家公務員の職務専念義務違反の根拠】
国家公務員法(職務に専念する義務)
第101条 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。
【地方公務員の職務専念義務違反の根拠】
地方公務員法 (職務に専念する義務)
第35条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び
職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべ
き責を有する職務にのみ従事しなければならない。
公務員に限ったことではありませんが、公務員がやる場合には一般人よりも問題になりやすいので、以下のような法令違反には注意しましょう。
違法アップロードは、著作権を侵害する違法な行為です。
10年の懲役や1000万円の罰金などの可能性もある非常に重い罪ですので、注意しましょう。
YouTubeの動画で具体的な事実を示して人の名誉を傷つけたり、誹謗中傷をしたりすると、刑法で規定された「名誉毀損罪」や「侮辱罪」にあたる可能性があるので注意してください。
著作権法や刑法による罰則のみならず、懲戒処分につながる可能性もあるので気をつけてください。
YouTubeの副業禁止に違反した場合、行われる懲戒処分は基本的には「戒告」「減給」です。
公務員懲戒処分には4つの処分があり、「戒告」「減給」「停職」「免職」の順に重くなります。
どのような行為や違反の場合にどのような懲戒処分をとるかの基準は、人事院や地方公共団体が定めている「懲戒処分の指針」で規定されています。
人事院が出している、「懲戒処分の指針」の抜粋は以下のとおりです。
参考:人事院「懲戒処分の指針について」
上記の表をみればわかるとおり、副業禁止は許可をとらなかったものなので、よほど特別の事情がない限り「停職」や「免職」になりません。
特別の事情がない場合にもかかわらず、指針や過去の懲戒処分の事例と照らして大きく外れた懲戒処分が行われた場合には、裁判などで取り消される可能性が出てきます。
公務員ユーチューバーが副業禁止に違反し、処分を受けた事例を2つ紹介します。
公務員ユーチューバーが収益を得るのはグレーゾーンではありますが、自治体によって懲戒処分をしている事例があるので確認していきましょう。
和歌山市の消防局職員は、2020年12月にYouTubeでゲーム実況チャンネルを開設し、314本の動画をアップして約115万の広告収入を得ていたとして、1カ月間の減給(10分の1)を受けました。
広告収入は家族の口座に振り込まれていたので、処分を受けた消防局職員としても懲戒処分を受ける可能性を認識していたといえそうです。
なお、副業は匿名の通報で発覚しています。
参考:和歌山市記者発表資料「消防局職員の処分について」
陸上自衛隊の隊員が、2017年6月から2019年3月にかけて、ゲーム攻略動画を投稿して約108万円の広告収入を得たために停職4日の懲戒処分になっています。
前述のとおり、YouTubeで広告を受けた場合の処罰は、副業許可をしなかったことなので、「戒告」・「減給」が通常です。
記事からだけでは詳しい状況はわかりませんが、行為の状況や結果、処分歴、故意、過失の程度、社会に与える影響を考慮した結果、特別の事情があるとして停職になったと考えられます。
参考:沖縄タイムスプラス「YouTubeで広告収入 陸上自衛隊の隊員、兼業で懲戒処分」
ユーチューバーが副業収入を得る方法として、大きく以下の7つが挙げられます。
有名ユーチューバーは、主に広告収入と自分のサービスへの誘導で収益を得ています。
広告収入を得るには条件を満たす必要があるので、確認していきましょう。
Youtubeから広告収入を得るためには、その条件を満たした上でYouTubeに申請する必要があります。
とくに重要な4つの条件は、以下のとおりです。
この中でもっとも達成するのが困難な条件は1の総再生時間が4,000時間以上です。
次に難しいのはチャンネル登録者数が1,000人以上ですが、1を達成できた人であれば自然と達成されている場合がほとんどです。
私も公務員であったから感じますが、法律的に何の問題もないことを、よく知りもせずに批判してくる人はいます。
そのため、公務員がユーチューバーとして活動するには、一般人よりも多くの批判の目にさらされることになるのです。
ユーチューバーとして収益を得るのも、グレーゾーンではありますが基本的に許可を得なければ懲戒処分になると考えていいでしょう。
公務員がユーチューバーとして活動する場合、原則として趣味としておくのをオススメします。
活動する際には、後ろめたいことがなくても顔出しや名前を出すのは避けて特定されてないようにしておくのが安全です。
県庁職員を約10年経験し、300人以上の同期中最速で県知事個人表彰を受賞後、未経験からWebライターとして独立。
副業禁止であったためまったくのゼロスタートながら、独立1カ月目で月10万円、3カ月目以降は安定して月20万円以上を稼ぐ。
行政書士試験は上位1%で合格。在職中に法律系の大学院を卒業するほどの法律好き。