にんにくは古代エジプトではピラミッド建設の際に労働者に与えられ、古代ギリシャでは徴兵の際に兵士の持参品であったほど精力増強を期待された食材。
現代ではその精力増強効果から、精力剤の成分として頻用されています。
夜の営みを改善したいと思ったことのある人であれば、にんにく=精力増強という関係を一度は耳にしたことがあるでしょう。
しかし同時に、本当に効果あるの?と思うこともあるでしょう。
にんにくであれば、普段の食事の中にも含まれていますし、居酒屋では丸まる蒸し焼きにした料理が出されているくらいです。
食べたことがないという人はまずいないでしょうが、それで精力が上がったという体感が得られたかは疑問。
本当に、にんにくは精力増強効果があるのでしょうか?
それを本記事では、詳しく解説していきます。
このページの目次
にんにくが精力と結び付けられる主な理由は、にんにくが疲労回復に効果的だからです。
加齢による体力低下や仕事などによる疲労蓄積が原因の勃起不全を、体を元気にすることによって解消しようということですね。
古代エジプトや古代ギリシャの時代では、「食べてたらなんか元気になった!」という現象が先行して、精をつけるために食べていたのだと思われますが、現代でも様々な効果が実証されています。
1990年にアメリカ国立がん研究所で発表されたデザイナーフードでは、最もガン予防効果の高い食材として位置づけられていたくらいです。
もともと人にとって非常に有益な食材ではありますが、その中でもにんにくと精力が結び付けられる効果は次の通りです。
スコルジニンやアリシンによる血管拡張作用で血流促進、血圧低下効果が認められています。
勃起は陰茎に血が流れ込むことで起こる現象なので、血流促進により勃起しやすくなります。
にんにくには疲労回復効果があるとされていますが、その理由はビタミンB1やビタミンB6による代謝促進が原因です。
ビタミンB1は豚肉などによく含まれている成分で、糖の代謝に必要な成分です。
ビタミンB1があると、糖が代謝されてエネルギーに代わるため、元気が出る=疲労回復というわけです。
しかし、ビタミンB1は分解されやすく、摂取してもその多くが吸収される前に胃腸で分解されてしまいます。
にんにく成分のアリシンはビタミンB1と結合してアリチアミンとなることでビタミンB1が分されるのを防いでくれるのです。
また、腸では水溶性より脂溶性の物の方が吸収率が高いのですが、ビタミンB1は水溶性です。
それが、アリシンと結合してアリチアミンになることで脂溶性に変わるため、吸収率が上がるのです。
吸収されたアリチアミンがアリシンとビタミンB1に分解され、ビタミンB1として働くことも分かっています。
ビタミンB1が分解されにくくなることと、吸収率が上がること。
これにより、糖を効率よくエネルギーに変えることができるため、疲労が回復するのです。
ちなみに、ビタミンB1の吸収率が上がることは京都大学の藤原元典氏と武田薬品工業の共同研究により判明し、それにより製品化されたのが目、腰、肩の疲れに効くアリナミンEXです(https://alinamin.jp/lineup/alinaminexplus.html)。
ビタミンB1が糖をエネルギーに変えるのに必要なように、ビタミンB6は脂質をエネルギーに変えるのに必要な成分です。
にんにくは、全食物中2番目にビタミンB6が多いと言われています。
ただし、食べられる量が多くないので、一日の必要量を補うにはそこそこの量を食べる必要があります。
18歳以上の男性の一日の必要量が1.4mgであるのに対し、にんにく1片あたりのビタミンB6量は0.09mg※なので、にんにくだけでビタミンB6を賄うのであれば1日16片必要です。
※カロリーSlismで計算(https://calorie.slism.jp/106223/)
テストステロン(男性ホルモン)は、体を男性らしくするホルモンの象徴で、加齢とともに減少します。
テストステロンが減少すると精力が減退し、それに伴って勃起の頻度、持続時間、硬さ、精液量が減少し、進行すると、勃起不全(ED)の一因にもなります。
そしてこのテストステロンは、にんにくを食べることによって増えることが報告されています。
ただし、にんにくは下準備や実験方法により結果が左右されるため、にんにくを食べることでテストステロンが増えるメカニズムはまだ解明されていません。
そして、食べてすぐに効果が表れるわけでもなく、毎日食べ続けるということが重要になります。
参考:Impact of garlic feeding (Allium sativum) on male fertility (I.Hammami & M.V.El May, 2012)
興奮や意欲を司るアドレナリン、ノルアドレナリンも、にんにくを食べることで増えると言われいます。
テストステロンなど、過酸化物質に弱い精力向上物質を保護します。
・アイリン
・アリシン
・アホエン
・スコルヂニン
にんにくの効能の主成分はアリシンとスコルジニンです。
かつてはアリシンがにんにくの効能の主成分と考えられていましたが、1936年、にんにく博士として知られる小湊潔博士によって無臭有効成分スコルヂニンが発見され、ニンニクに含まれる成分の中で最も強力な有効成分がスコルヂニンであることが発表されたのです。
にんにく100gあたり400mgのアイリンが含まれている。
抗菌作用や抗酸化作用があり、テストステロンの低下を防ぐ効果も認められています。
にんにくを切ったりすり下ろしたりすると、酵素アリイナーゼが分泌し、アイリンをアリシンに変えてしまいます。
それを防ぎたい場合は、にんにくを焼いてアリイナーゼが働かなくなるように(変性)させるのが有効です。
にんにくの精力増強効果の主成分。
強い抗菌作用、抗酸化作用、疲労回復、滋養強壮、血行促進、ビタミンB1の吸収率向上効果など、様々な効果が認められています。
生の状態でのにんにくには含まれていませんが、にんにくを切った際にアイリンとアリナーゼが反応してアリシンができることが分かっています。
また、にんにくのきつい臭いのもとでもあるため、にんにくを傷つけないよう調理することでにんにくの臭いが抑えられるとも言われています。
ただし、アリシンがないとにんにくに期待される効果は発揮されないので注意です。
また、にんにくを食べすぎるとお腹を壊すというのもアリシンの殺菌効果によるものです。
アリシンの殺菌効果はアイリンよりも強く、大切な腸内細菌を殺してしまうため、食べすぎるとお腹の調子が悪くなるのです。
成人であれば1日1片、子供であればその半分が一日の許容量となります。
アリシンを50~80℃の油の中に5日間ほど置いておくと、アホエンになります。
アホエンは精力増強効果はないにせよ、脳細胞の活性化、発がん性物質の抑制、コレステロールや尿酸値の低下、美肌効果といった様々なメリットがあります。
にんにくに含まれる成分として、アリシンと肩を並べて注目されているのがスコルヂニン。
にんにくに含まれている量がアリシンの方が圧倒的に多いため(正確にはアイリンから変換された量)、にんにくを食べるということであればアリシンが主な効果を発揮する成分なのですが、同じ量であればスコルヂニンの方が強力な有効成分であることが小湊潔博士によって解明されました。
スコルヂニンには血液循環促進作用、ビタミンB1吸収促進、アドレナリン/ノルアドレナリン分泌促進など、アリシンに認められる効果とおなじ種類の効果がありますが、スコルヂニンはアリシンの持つ効能をほぼ上回ります。
そして、アリシンと違って抗菌作用がなく無臭です。
そのため、多く摂取したからといって胃長が荒れることはないですし、臭いを気にする必要もありません。
ですから、プロキオンやOX200に代表される、オキソアミヂンをメインにした精力剤も数多く出ています。
唯一欠点があるとすれば、にんにくに含まれている量が少ないこと。
スコルヂニンの効果を体感するには、一日200mgのスコルヂニンを摂取する必要がありますが、そのためには13個ものにんにくを食べなければなりません。
胃腸が荒れることから一日の適量が2片であることを考えると、にんにくのみでスコルジニンを摂取するのは現実的ではありません。
スコルジニンを摂取したい場合は、サプリメントから摂取するのがおすすめです。
精力増強を目的としてにんにくを食べるのであれば、アリシンがある状態の食べる必要があります。
つまり、にんにくを切ったりすり下ろしたりした状態で食べるということですが、そうすると臭いだけでなく殺菌作用が強くなることに注意です。
食べすぎると腸内細菌が殺され、胃腸の調子が悪くなります。
一日2片までが適量です。
・加齢でスタミナがなくなってきた人
・仕事が忙しく、疲労が蓄積している人
・運動不足な人
にんにくの主な効果は疲労回復ですが、回復だけでなく気持ちを前向きにさせたり血行を良くする効果も期待できるため、日々の生活で気分が停滞、もしくは沈む人にとってもお勧めです。
逆に、精液が増えるといった効果はありませんので、精子不足な人にとってはにんにくを取ったところで改善の効果は見込めません。
精力剤の成分としてちょくちょく登場するのが黒にんにく。
普通のにんにくのパワーアップ版として紹介されることが多いですが、普通のにんにくとどう違うのでしょうか。
黒にんにくはにんにくを一定温度・湿度のもとで1ヵ月ほどじゅくせいされたもので、市販品としても容易に手に入ります。
黒にんにくは普通のにんにくと比べて非常に栄養価が高いことで有名です。
また、にんにく特有のきつい臭いや、強力な殺菌作用も抑えられています。
臭いや殺菌作用が抑えられるということは、アリシンが減少したということですが、それは熟成過程で成分が大きく変化するためです。
黒ニンニクに含まれる精力増強に関わる成分には、アルギニン、ポリフェノール、S-アリルシステインがあります。
アルギニンは勃起に必要な神経伝達物質ですが、摂取することで勃起しやすくなることが分かっています。
また、熟成過程でアリシンが変化したS-アリルシステインやポリフェノールには強い疲労回復効果が認められています。
にんにくには疲労回復効果があるため、疲労が原因で勃起できなくなっている人にとっては効果が期待できる食材です。
ただし、アリシンの強力な殺菌作用から、食べすぎるとお腹を壊して下痢になったりします。
適量は1日2片まで。
ただし、効果を実感するまでは日常的に食する必要がありますので、即効性は期待できません。
もし早めの効果を期待するのであれば、黒にんにくをお勧めします。
黒にんにくであれば普通のにんにくより栄養価が高いうえに、殺菌作用が抑えられていますので、量を増やしても問題ありません。
にんにくに含まれる成分の中で最も有効成分はスコルヂニンですが、スコルヂニンの効果を体感するためには一日200mg、13個分のにんにくを食べる必要があります。
ですから、スコルヂニンの必要量をにんにくから得るのは現実的に不可能ですので、精力剤から摂取することをお勧めします。
ただし、精力剤の中でもスコルヂニンの量が中途半端なものもあるので、選ぶ際は成分量に注意してください。
一日分の量が200mg以上のものを選んでください。
趣味:バドミントン、読書
もともと生物系の研究をやっていたことがあり、健康は栄養からというのを信じてやまない。
栄養を重視したダイエットで、1ヵ月で6kg減に成功。
・にんにくに含まれている精力増強成分とそれぞれの理由
・にんにく摂取時の注意点