腎臓内科医YouTuberが解説!腎臓病の予防と早期発見のコツ

記事更新日: 2019/09/11

ライター: ヨッシー

Dr. おかめ

初めまして、腎臓YouTuberの「Dr. おかめ」です!

 

この記事にたどり着いてくれてありがとうございます。

いきなりのおかめ顔でびっくりさせてごめんなさい。

私は現役の腎臓内科女医として働きながら、腎臓のことを詳しく知らない人や腎臓のことで困っている人に『腎臓の大切さをもっと知ってもらいたい』という思いでYouTuberとしても活動しています。

”大事だけど当たり前すぎて誰も話題にしないこと”こそ、医療者が発信する意味がある』という信念で情報発信をしています。

この記事を読んでくれているあなたはきっと

  • 健康診断で出たクレアチニンやeGFRの数値が気になった
  • お知り合いに透析患者の方がいて、自分の腎臓は大丈夫かなと心配になった
  • テレビなどの情報で腎臓病が怖い病気だと知った

といった具合に、何かしら「自分の腎臓」に興味を持った人ではないかなと思います。

そんなあなたに、まずは

Dr. おかめ

興味を持ってくれてありがとう!

とお伝えしたいんです。なぜなら、腎臓は「沈黙の臓器」だから。

 

慢性腎臓病(以下、腎臓病)は悪化していく過程で自覚症状がほとんどありません。

そのため、「気づいたらボロボロの状態」になっていることがよくあるのです。そして一度ボロボロになってしまうと回復することが非常に難しくなる病気でもあります。

だからこそ、あなたがボロボロになる前に興味を持ってくれてとても嬉しいし、腎臓病の怖さを知る内科医としてありがたいなと思うのです。

そこでこの記事では、

  • そもそもの腎臓の役割や機能
  • 腎臓病ってどんな病気?
  • 検査結果でわかる腎臓病の兆候
  • 腎臓病を予防するための習慣

などをあなたと共有していけたら嬉しいです。

腎臓が担う「私たちの体になくてはならい」役割とは?

Dr. おかめ

まずは腎臓の機能・体の中での役割に関する理解を深めましょう。

 

病気になることの怖さがいい意味で理解できます。

腎臓の役割は主に5つあります。

  • 尿を作る
  • 血液を作る働きを助ける
  • 血圧を調整する
  • 骨を丈夫にする
  • 体内バランスを調整する

それぞれの役割について解説していきましょう。

尿を作る

腎臓には、心臓から大動脈を通って流れてくる血液が1日に1500リットルも流れてきます。

腎臓は、その血液の中に入っいるものを「体に必要なもの」と「体に不要な」ものに分け、必要なものは体に戻し、不要なもの(ゴミ)を尿として排泄しています。

腎臓の中で尿を作る役割を担っているのは「ネフロン」と呼ばれる組織で、左右に100万個ずつのネフロンがあると言われています。

例えるなら腎臓は『左右合わせて200万人の人が働いていて、毎日1500リットルの水を、24時間365日さばき続けているリサイクル工場』だとと言えます。

この尿(ゴミ)の中には、水・ミネラル・酸が含まれており、それらの排泄することで体内のバランスを整える役割も同時に担っているんですね。

血液を作る働きを助ける

腎臓がうまく機能しなくなると、血中の赤血球が減少し、貧血にもなってしまいます。

骨髄で赤血球が形成されていく過程で、エリスロポエチンというホルモンが必要になります。

このホルモンを出しているのが腎臓なのですが、腎臓が不調になるとこのエリスロポエチンという、赤血球の赤ちゃんを大人にする魔法をかける力が弱まってしまうので、血中の赤血球の数が減少してしまうんですね。

腎臓内科で「造血剤」を肩に注射されている人を見たことがある人もいるかもしれませんが、その造血剤の中身がエリスロポエチンなんですね。

検診で「貧血」と言われている人は、腎臓の機能に問題がないか一度チェックしてみてください

これも腎臓病を予防するための大切な体のサインです。

血圧を調整する

先ほど、腎臓は体内のミネラルバランスを調整すると言いましたが、その最たる例が「ナトリウム(塩)」です。

腎臓が機能しなくなると、血中の水分とナトリウムの量の調整がうまくいかなくなり、結果的に高血圧になってしまいます。

同時に腎臓は血圧そのものを調整するホルモン(上昇させるレニンと、下降させるプロスタグランジン)の分泌も担っていますので、それも高血圧になる原因になります。

血圧が高くなると当然腎臓の中に走っている血管にも負担がかかるので、さらに腎臓の働きを弱めてしまうんですね。

この高血圧の負のループがあるため、「高血圧は腎臓の病気」と言われるほどです。

骨を丈夫にする

骨を丈夫にするには、小魚や牛乳を摂取したり、日光浴をすることで作られるビタミンDが必要になります。

しかしこのビタミンD、そのままでは使用することができません。

肝臓と腎臓の働きによって、「活性型ビタミンD」というものに変化することで、初めて骨を丈夫にすることができます。

そのため腎臓の働きが悪くなると、骨がもろくなってきてしまうんですね。

体内バランスを調整する

腎臓は、尿の量を調節することで体内の水分量を一定に保っています。

体内の水分が少ない時は濃く量が少ない尿で、体内の水分が多い時は薄く量が多い尿でバランスをとっているんですね。

同時にナトリウム(Na)やカリウム(K)・カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)などの電解質のバランスも保ち、血液が酸性に傾かないように、弱アルカリ性に保つ役割も担っています。

つまり腎臓は、体にとってのバランサーでもあるんですね!

腎臓の不調がもたらす魔の「合併症スパイラル」

さて、これまで腎臓の役割を見て来ました。

腎臓は体内の様々な機能を調整する「バランサー」としての役割を担っているので、ここが崩れると体のバランスが一気に崩れていきます。

中でも血圧調整の役割を担っている関係から、慢性腎臓病(CKD)にかかってしまうと、その重度によって心血管病(脳卒中・心筋梗塞・心不全など)にかかるリスクが比例して上がっていきます。

成人の8人に1人がかかる!?慢性腎臓病の定義とは

慢性腎臓病の定義は次のように定められています。

慢性腎臓病の定義

①:蛋白尿などの尿異常、診断画像・血液検査などから腎障害の存在が明らか

②:糸球体ろ過量(GFR / glomerular filtration rate)が60ml/分/1.73㎡未満

上記①・②のいずれかまたは両方が、3ヶ月以上続いている状態

慢性腎臓病の患者さんは、日本に1,330万人いるとされているので、『成人の8人に1人は、腎臓に障害があるもしくは腎臓の機能が低下している状態が3ヶ月以上続いている』ということになります。

そう言われると「自分は大丈夫かな?」とちょっとドキッとしますよね。

また慢性腎臓病は末期腎不全の予備軍であるため、透析患者になってしまう人の数を減らすためにも、近年非常に注目されている病気でもあるのです。

予防、早めの発見、早めの治療開始が重要!

腎臓機能は失われてしまうと回復が非常に難しいとされており、一度慢性腎臓病になってしまうと、進行を遅らせるための治療や、心血管病の併発を予防するための治療しかできなくなってしまいます。(※1)

しかし慢性腎臓病は手前の自覚症状に乏しいため、「発症していることに気づきにくい」病気でもあるのです。

これが冒頭で私が「腎臓は沈黙の臓器」だと言って警鐘を鳴らした理由なんです。

だからこそ慢性腎臓病は、その予防や早期発見・早期治療の開始がとても重要になるのです。

(※1)慢性腎臓病とは別に、急性腎障害という状態があります。

こちらは適切な処置を行えば、腎機能が回復する見込みがあります。

検査結果で気になる「クレアチニン」って?「eGFR」って?

では、どうやってその「沈黙の臓器」の声を聞いたら良いのでしょうか?

そこでポイントになるのが、「クレアチニン」と「eGFR」です。

尿検査などでもこの2つの項目が気になった人も多いのではないでしょうか?

クレアチニンは筋肉が出すゴミ

Dr. おかめ

ざっくり言うと、血中のクレアチニンの濃度が

 

基準値より低ければ問題なし、

基準値より高いと要注意!となります。

クレアチニンは、筋肉がエネルギーを使うときに出るゴミのようなものです。

クレアチニンは普段、腎臓の糸球体でろ過されて尿と一緒に体外に排泄されるため、腎臓でのろ過がうまく機能していないと、血中に戻されるクレアチニンの量が増えます。

つまり、血中のクレアチニンの濃度を測定すれば、腎機能の良し悪しを判断する材料になるということですね。

図解-クレアチニンの基準値
画像引用:goo辞書『クレアチニン検査の目的』より

基準値は男性でおよそ0.6~1.0mg/dl、女性でおよそ0.4~0.7mg/dlだと言われています。

とはいえ、クレアチニンは筋肉量で左右されるため個人差(男女差・年齢差)があります。

そこでより正確に腎機能を判断するために必要になるのが、このクレアチニン値・年齢・性別で算出されるeGFRです。

eGFRは腎機能の得点(60点以下は要注意!)

Dr. おかめ

eGFRは腎機能テストの得点のようなもの。

 

60点を下回ると要注意、となります。

eGFR(estimated glomerular filtration rate)=推算糸球体ろ過量によって、腎臓の機能がどのくらい下がっているのかを測定することができます。

例えば、50歳男性のクレアチニン値が0.8mg/dlであれば、

eGFRは80.6、ステージ2で問題なし、となるんですね。

でも、これが例えば同じ50歳男性でもクレアチニンが1.3mg/dlあると、

eGFRは47.4、ステージ3で慢性腎臓病の疑いあり、となってしまうんです。(※2)

このようにeGFRによって、慢性腎臓病なのかどうかも判断することができるのですが、あくまでも「推算」であるのが注意です。

eGFRが高い人でも腎臓病が疑われる人はいて、その判断の根拠になるのが「蛋白尿」なのです。

(※2)こちらの計算は、NPO法人腎臓サポート協会の『腎臓病なんでもサイト』で計測することができます。(シミュレーション結果もそちらのサイトから引用)

お手元に健康診断のクレアチニン値がある方は、ぜひ計測して見てください。

蛋白尿は体からの重要なサイン

Dr. おかめ

あなたは「蛋白尿」って聞いたことありますか?

読んで字のごとく、尿の中にタンパク質が漏れてしまっている症状のことを言います。

タンパク質は、髪の毛や肌・骨やホルモンに至るまで、私たちの体を構成するありとあらゆるものの材料になっています。

そのため、血管を通じて腎臓に入ったタンパク質は、そのほとんどがリサイクルに回され、体内へと戻っていきます。

この時、腎臓の働きが悪くなっていると、このタンパク質をゴミだと勘違いして、尿と一緒に体外へ捨ててしまうんですね。これが蛋白尿です。

蛋白尿は腎臓の悲鳴であり、その量が多ければ多いほど、腎臓が抱えている問題が大きい、ということになるのです。

蛋白尿の検査は自分でもできる!


画像引用:『Dr. おかめの腎のおはなし』より

蛋白尿は尿が泡立ち、いつまでもその泡が消えないのが特徴です。

健康診断の尿検査の項目には、『ー・±・+・2+・3+』といった表記で書かれています。

もし検査結果が、+以上の人は腎臓が悲鳴をあげているかもしれないので、病院で一度見てもらいましょう!(2+以上の人は腎臓内科の先生に診てもらうとイイでしょう)

もし病院に行く暇がないよ、という人は市販の試験紙を使って自分で検査することも可能です。

慢性腎臓病を予防するための5つの習慣

Dr. おかめ

腎臓病の怖さは伝わりましたでしょうか?

 

ここからは、具体的にどのようにして予防して行くかを解説していきます!

腎臓の異変に気付くように意識する

これまで見て来たように、「腎臓が機能しなくなるとどうなるのか?」を理解しておけば腎臓の異変に気付きやすくなります。

先述の蛋白尿もそうですが、尿に赤血球が混じって紅茶色に濁る「血尿」も、腎臓の働きが弱っている可能性があります(泌尿器科の病気のこともあります)。

また、腎臓が悪くなると「むくみ」が目立つことがあります。

特に、靴下のゴムの跡がいつまでも消えない、まぶたが腫れぼったい、靴を履くのがきついといったむくみが朝にもある人は、腎臓を痛めているかもしれません。

少しでも不安になったら、尿検査を受けたり、腎機能を調べてもらいましょう!

腎臓内科のある病院を検索

血圧、血糖、脂質、肥満を見過ごさない

Dr. おかめ

血圧、血糖、脂質、肥満の管理が悪いと、腎臓が悪くなっていってしまいます。

腎臓には血圧を調節する役割がありますから、血圧の状態が悪ければ、腎臓が悪くなっている可能性が考えられます。

また、高血圧、高血糖の状態が続くと腎臓がダメージを受けていってしまいます。

そのほか、脂質の取りすぎによる肥満は、メタボリックシンドロームにつながり、慢性腎臓病の発症の原因にもなります。

これらの病気も症状がでにくいのですが、見つけてしっかり管理することで、腎臓が悪くなるのを予防することができます。

減塩をする

Dr. おかめ

腎臓を守るための食生活にはいろいろありますが、

 

特に重要なのが「減塩」です。

塩分を取ると喉が乾きますよね。その分たくさんのお水を飲むことになります。

するとたくさんとった塩分と水分が腎臓に負荷をかけることになります。

加えて、その塩分と水分によって血圧が上がってしまいます。

そうなると腎臓にも滝に打たれているような圧がかかってしまうんですね。

逆に減塩することで、血圧が下がり、むくみが取れやすくなり、尿タンパクを減らす効果もあると言われています。

日本人は1日平均10gの塩分をとっているとされていますが、腎臓に負担が少ないのは1日6gです。1日の摂取量を1/2〜2/3くらいにするイメージを持って食事をするようにしましょう。

1日30分、有酸素運動をする

Dr. おかめ

毎日の運動もやっぱり重要です。

適切な有酸素運動には、体の衰えを防ぐだけでなく、腎臓の働きも良くする可能性が知られています。

運動、といってもそんなに大げさなものではありません。

ウォーキングなどの軽めの運動でも1日30分行うと効果的です。

タバコは吸わない

タバコは慢性腎臓病の原因になります。

タバコは蛋白尿を増加させ、腎機能障害の進行を促進してしまいます。

タバコに含まれる様々な有害成分は血液中を循環し、血管を傷めてしまうんです。

腎臓は、その血管が細かく集まっているところでもあるので、腎臓自体にも当然悪影響が及んでしまうんですね。

まとめ

Dr. おかめ

最後まで読んでくれてありがとうございます!

以上、腎臓の役割から始まり、腎臓病やその予防・早期発見について解説しました。

脳や心臓などのスーパースターと違って、臓器の中ではまだまだ知名度が低く、その重要性が認知されていません。

『腎臓は、我慢強くて謙虚な縁の下の力持ち』

だからこそ、その土台が崩れないようにしっかり腎臓病の予防をしていかなければならないと私は思います。

私、Dr. おかめはこれからもYouTubeやTwitterなどで、腎臓についてどんどん発信していきます。

最近では、動画メディアの「bouncy」さんともコラボ動画を作成しました。

 

もしあなたが腎臓についてもっと詳しくなりたい、と思ったらよかったらYouTubeのチャンネル登録をしてくださいね。

 

この記事を書いたライター

ヨッシー

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